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君の温度 第10回 古川ほのか

SERIES -君の温度

連載「君の温度」は、女優さんの素顔に着目して、彼女たちの新しい魅力をお届けします。
第10回目の被写体は、古川ほのかさん。初夏の千駄木周辺を散歩しました。
写真から伝わる夏の気配と、古川さんの儚い表情にぜひ注目してください。

写真・コハラタケル/文・星野文月

湿度と熱が街を溶かしているみたいだった。
息が苦しくなるような気温の中、君はうそみたいに涼しい顔をしている。

街ゆく人たちは何かから逃げるみたいに、険しい顔をして足早に歩いてゆく。
そんな様子を横目に見ながら、君は何かを確かめるみたいにゆっくり歩く。

「ねえ、私たち夏なんてこれまで何度も経験してきたのに、夏がこんなに暑いこととか、いつも忘れちゃうね」

そう言って君は笑う。

「いつもわかんなくなっちゃうの。一年前のこととか思い出そうとするとき、私はどこで誰と居て、私はどんな風に笑っていたんだっけ、って」

君の横顔越しに見える景色が、夢みたいに揺らめいて見えた。

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