愛しのレディ。
青いシーツに横たわるきみは、オアシスに浮かぶ女神の彫像。
彼女に魅了されたぼくは、深い、深い、水底へ堕ちていく。
ふたりに許された時間は永遠じゃない。
きっと、彼女の手に握られた花が枯れる頃には終わってしまう、短い逢瀬。
そしてきみは、甘くて優しい高貴な猛毒。
ぼくの心を蝕んだまま、永遠に癒えない傷として残り続ける。
レストルームに入った彼女は「大袈裟だね」と微笑みながら、大胆にぼくを挑発した。
匂い立つような仕草は蠱惑的で、あられもなく広げられた脚は思わず飛びつきたくなるほど瑞々しい。
欲望に駆られたこちらの心を見透かすように、彼女は切なげに「来て」と囁いた。
普段のきみは無邪気で明るい女の子なのに、服を脱ぎ捨てたきみは艶やかな淑女。
シャンデリアの明かりを浴びながら、変幻自在に姿を変えて、ぼくの心をかき乱す。
外の世界から逃げる前、つないだ手を最初に引いたのは彼女だった。
いつの間にかふたりで走り出して、どこへ向かおうとしていたのかは、もうよくわからない。
こうなった理由を尋ねると、きみは「アナタの横顔ばっかり見るのに飽きたからかな」と悪戯っぽく白い歯を覗かせた。
横顔ばかり見つめていたのは、ぼくのほうだと思っていたのに。
ふいに彼女が「こっちを向いて」と囁いた。
振り向いたぼくの意識を、きみの深く澄んだ瞳が呑み込んでいく。