ランジェリーのコンセプトショップ「il FELINO.(イルフェリーノ)」のジェネラルマネジャーとして活躍するかたわら、自身がモデルとなって積極的に情報発信するなど、ランジェリーカルチャーを牽引する存在として知られる北 菜月さん。
ランジェリーをファッション捉えるなかで提案されるこれまでにない斬新なスタイリングが、同世代の女性を中心に共感を集めています。「il FELINO.」のランジェリーモデルとして、セクシー女優の桜空もも・架乃ゆらを起用したことでも話題を集めました。
今回、そんな北さんにインタビューを敢行! ご自身の経歴やコンセプトショップ立ち上げの経緯やブランドコンセプト、そしてモデル起用に至った経緯や撮影時の様子などについてお聞きしました。
『セクシー女優×「il FELINO.」デジタル写真集』未公開ショットはこちら
アパレル販売員から下着専門の販売員へ、ランジェリー愛の原点
――どうして、アパレル販売員から下着専門の販売員に?
北 菜月(以下、北) アパレルショップでは、私が何かを変えられると思えませんでした。もっとクリエイティブなことをしたいと。そこで思いついたのが下着です。
――もともと下着には思い入れがあったのでしょうか?
北 子どもの頃から、女性の身体の曲線が好きでした。裸のお人形やグラビア写真を、どこか性的な眼差しで楽しんでいたように思います。私もいつかこういう身体に変わるんだろうと妄想をしていました。
――裸ではなくランジェリーに関心にもたれるようになったのはどうしてですか?
北 ある日、父が母に真っ赤なタンガ(※Tバックの一種)をプレゼントしていたのを見てしまったんです。それはもう衝撃的で…。
母が着用していたかどうかはわかりませんが、何度も引き出しを開けては、鮮やかな赤のタンガを眺めていたんです。そのせいもあってか、高校生のとき、自分のお小遣いを貯めて初めて買った下着もタンガでした。
――高校時代にタンガは過激!
北 当時、私の故郷は、スカートが短いランキングで上位に位置していたので私のスカートも短くて…。タンガを履くとちらっと見えてしまうんですが、そのスリルを楽しんでいました。
洋服にはないおもしろさですね。ベビードールを服として着ていたら、見知らぬおじさんに「頭がおかしい」っていわれたこともありました(笑)。
「il FELINO.」で自分を縛らずかわいくキレイにセクシーなランジェリー体験を
――「il FELINO.の立ち上げに参加したきっかけは?
北 若い人たちにもっと下着を楽しんでもらいたいと考えたのが原点かもしれません。下着のセレクトショップは高くて若い人には敷居が高い、百貨店も入りにくい…。
それから、「年齢体型関係なく、下着をファッションとして身にまとっていいんだよ」とメッセージを発信したかったというのもあります。胸を盛ったりウエストを締め上げたりしなくても、そのままでかわいいし、キレイだよと。
女性の身体とランジェリーだけで、補正しなくてもセクシーになれることを伝えたいなと強く感じていました。
――「il FELINO.」のコンセプトについて教えてください。
北 「il FELINO.」のコンセプトは、「肌にまとう芸術」。「il FELINO.」のランジェリーを身に着けると自分自身がアップデートされて自分をより美しいと思えるようになって欲しい…。そんな願いを込めています。
「il FELINO.」はイタリア語で「ネコ科」という意味です。ネコ科の動物と女性って似ていると思うんです。甘えたいときもあれば、ひとりになりたいときもある。いろいろな一面をもっていますよね。
それから、ネコ科の毛皮はとてもきれい。つねにふわふわの美しい毛皮を身にまとうネコ科の動物と、ランジェリーを身にまとう女性のイメージが重なりました。
体毛はそのまま、胸も小さめ…。それが自然体で、エロくかわいく、かっこいい!
――北さん自身がInstagramにランジェリー写真を投稿しようと思った理由は?
北 私がInstagramへの投稿を始めたのは2014年で、当時、私みたいなスタンスで下着姿をアップしている人は多分いませんでした。でも、「補整下着でこれだけスタイルが変わったよ」っていう人はいたかな…。
昔の下着のカタログって、スタイルがよい外国のモデルさんばっかりで、「細いこと」「胸が大きいこと」が正義だったと思います。日本の女性たちが、細さの正義、呪縛に縛られているように思えたんです。
そうじゃなくても大丈夫だよ! と伝えたいなとずっと思っていました。
――確かに、細くなきゃダメ!胸は大きく!っていうのがスタンダードな気がします。
北 それっておかしいと思うんですよね。女性は細さこそ正義だと思っていますが、男性にとっての魅力的な体型は、少しふっくらしていることが少なくないですよね。そこで不幸なギャップも生まれているんです。
だからといって、細いからダメってわけでもない。今のままで美しくあろうとする人も、もっとキレイになろうとする人も、すべての人が自分を受け入れて慈しんで欲しいと思うんです。私の姿がそれの一助になればなと。
――北さんがありのままの姿を見せていることで、どんな反響がありましたか?
北 「胸よりお腹のほうが大きくなった」と投稿をしたときに、たくさんの方からコメントをいただけたんです。かっこよくいることよりも、ダメな部分を見せるほうが共感されたわけです。
みんな、きれいなフォーマットが溢れる世界に疲れているんだなと実感しましたね。私が写真をアップするようになってから少しずつですが、同じような下着姿を投稿する人が増えているように感じます。
――北さんのデコルテがすごくきれい!どんなケアをされているんですか?
北 実は、運動も苦手ですし、体毛も剃っていません。肌をきれいにするためのケアもしていないんです。今は脱毛がデフォルトみたいなところがあって、いたるところで「毛を抜け」とうるさいですよね。でも、私はムダ毛ケアを辞めてから肌の調子が良くなったので、もう生やしたままです。
――北さん以外がモデルになることもあるんですか?
北 お客様をモデルにしていることもあります。年齢や体型を問わず、「あなたにも着られるんだよ!」と伝えたいので。
セクシー女優だから表現できる、女性の承認欲求の満たし方
――女性のありのままの姿を見せることを強調されているなか、とりわけ美しさに秀でたセクシー女優さんを起用した理由は?
北 たしかに、私は「下着モデルは外国のスリムかつ豊満なモデルが多い」「リアルな女性を」「誰でも楽しんでほしい」といっていますよね。なのにセクシー女優?と疑問に思う方もいるかなと思います。
――北さん自身やお客様がモデルになることの対極にあるようにも思えます。
北 私は、根本的には同じだと思っています。「自然体でセクシーに」が、私のコンセプトですが、セクシーな部分って異性にも認められないと成立しない部分があると思っているんです。
女性だってエロくみられたい。そこを極めているのがセクシー女優さんではないかと。
それから、セクシー女優さんたちをポジティブに勇気づけたいと常々考えていました。彼女たちは男性には認められていても、女性のあいだでは必ずしも同じようには受け入れられない部分があります。
今はそこまで酷くははないと思いますが、もっともっとフラットにしたいなと。下着と写真を通じて、彼女たちのイメージを変えられたらいいなとも思っていました。
――桜空ももさん、架乃ゆらさんをキャスティングした理由は?
北 桜空ももさんは、私が個人的なファンでした。前からすごく好きで、いつか一緒に仕事ができたらなと思っていたんです。女性から見てセクシーだなと思う方で、こんな体型の人がいるんだ!って驚きました。
架乃ゆらさんは、とにかく表情が豊かなんです。シーンに合わせて変えられる演技力の持ち主。
――北さんもアダルト動画をご覧になるのですか?
北 観ますよ。お店のお客さんも、セクシー女優さんのお話をします。女の子のなかでも、アイドルのような立ち位置になりつつあるんだなと強く感じています。お二人を選ぶからには、もちろん出演している作品も観ています。
――桜空ももさんとの撮影ではどのように感じましたか?
北 「脱げていく、ほどけていく美しさ」を知りました。バストの部分を半分外してみたり、ボディスーツからバストを取り出してみたり…。そうすることで、下着だけでなく女性の身体ももっと美しく見えるんです。
――桜空ももさんのきれいな曲線とランジェリーのコラボがたまらない!
北 女性が見てもかわいくて美しくて、引き込まれますよね。セクシーとアートの境界線を探る感じで撮影をしていたので、女性にそういってもらえると嬉しいです。
――架乃ゆらさんはどのような印象でしたか?
北 想像以上に演技力が高くて驚きました。下着を変えるだけで別人のように見えるんです。ヘアメイクをがらっと変えていますが、それ以上に架乃ゆらさんのおかげで、全然違うイメージの写真を撮ることができました。
――たしかに、「同じ人だよ」といわれなければわからないほど別人感がでています。
北 これは彼女の持つ演技力のたまものだと思います。表情、雰囲気が180度変わっていますよね。
――ヘアメイクも北さんが?
北 コンセプトをお伝えして、相談しながらヘアメイクさんと一緒に決めていきました。へアメイクさんに、「こんな面白い仕事は初めて!」といってもらえてすごく嬉しかったです。
――たしかに、架乃ゆらさんのメイクはかなり攻めてますね。
北 かわいいですよね!目の下の白いラインは女性陣からはすごく好評でした。
下着への動線を増やしたい〜これからのリブランディング
――これからやってみたいこと、目標を教えてください
北 「il FELINO.」のリブランディングです。この数年の下着業界には、「リラックス」というムーブメントがあります。ノンワイヤーやストレスフリーといった価値観が定着しつつあるんです。
だから、補正力だけでなく、洋服を選ぶようにファッションでランジェリーを選ぶという選択肢をもてる女性がもっと増えたらいいなと考えています。そのために、ファッションをフックにランジェリーに興味をもってもらう動線を作っている最中です。
今回のセクシー女優さんの取り組みもそのひとつで、すでに大きな反響をいただいています。Twitterでエゴサーチをすると、「架乃ゆらさんが着ていた下着を買った!」とつぶやいている方がいて、そういった方が増えていったら下着のあり方も変わっていくのではと感じました。
2021年2月には、セクシー女優と「il FELINO.」がコラボした電子書籍の発売を予定しています。乞うご期待!