新宿・歌舞伎町 遊楽膳
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通りすぎてしまった。
ここがラブホテル? いや、どう見ても、明朗会計感が漂う居酒屋さんだったから。
もしも付き合いたてのカップルだったら、なんだか安心しきって、ふたりで顔を見合わせて笑ってしまうかもしれない。
でも、そんなふうに油断させておいて、305号室のドアを開けると、まさかトリップさせられるなんて。
松本「えっ……! ここ、すごい……! 居酒屋さんかなって思って入ったのに。びっくり! サプライズされた気分!」
壁は赤、床も赤、ソファも赤。そしてベッドサイドは全面びっしり鏡張り。照明は、妖しくギラつく明るさか、深い闇を誘う真っ暗か。でも、それだけじゃあ終わらない。天井からは物々しい手錠がふたつ、吊るされて、異質な空間をさらに異質に盛り上げる。
松本「久しぶりにこんなラブホテルに来た……。昭和に迷い込んだ気分」
松本「天井も鏡張りなの!? すてきすぎる!」
性のアミューズメント化が花盛りだった80年代後半から90年代初頭、カップルのムフフな気分を掻き立てる過剰な演出を取り入れたラブホテルが、各地に乱立した。そのなかで今も残るホテルは“アートラブホ”とも称され、昭和レトロ好きの間では欠かせない探訪スポットとなっている。
ここも、そんな趣が、室内にも、そして浴室にも贅沢に残る。
清潔にリフォームされた浴槽とは一転して、浴室の壁は赤いタイルがずらり。
昭和から一体何人のカップルの営みを見守り続けたんだろうと、年季の籠もったタイルを触ると、硬くひんやりとした温度が伝わる。松本さんにも、そんなカップルの残り香が移ったのか、いやおうなしに気分が盛り上がる。
松本「ロマンポルノの登場人物? それとも映画『ヘルタースケルター』の世界観?
いや、伝統的なストリップの舞台みたいな……とにかく、すごくエモいっていうか、かっこいいことをしている気分になりますね」
とはいえ、あからさまな照明や手錠、そして逃げも隠れもしないアダルトグッズの販売機が、ここはやっぱり「エモい」だけじゃなくて「エロい」場所だと思い出させてくれる。
松本「わたしはいつも男性にいじわるする役柄ですが、プライベートではここでMになってみたいな。鏡を見ながら、いきなりうしろから挿れられて、『おい、見ろよ。入っているところを見ろよ!』って、言われてみたい(笑)」
純喫茶でパンケーキを頬張ってクリームソーダを飲んだあとは、鏡の前で、お互いに見たことがないくらい乱れに乱れて。
昭和のカップルがそうしたように、令和のカップルも、ここでなら、我も映えもすべて忘れて没頭できそう。
だってここは、ふたりだけの秘密基地だから。