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陰キャを全肯定してくれる映画『映画大好き ポンポさん』ねっちょりレビュー

連載 -ねっちょり映画レビュー

「fempass」をご覧のあなたのおこもり需要に合うことを願いつつ、おすすめ映画を独断と偏見で、ゆるっと紹介していくコーナーです。

ねっちょりじめじめしたタイプの愛の星・うお座ガール(ぺちこ)が、ねっちょりじとじと読み解いたレビューですので、何卒ご理解のほどお願い申し上げます。

文・ぺちこ/イラスト・土屋みよ

ぺちこ プロフィール

うお座の星の下に生まれた弩級のロマンチスト。“運命”とは、一本の時間軸上にあると考える淑女。つまりパラレルワールドモノは苦手。先日初の婚活パーティーに参加したわけだが、参加条件30代!という条件のもと参加したのにふたを開けたら男性陣全員40代でこの世を恨みました。人間は信じてはいけない。私は森で、あなたはタタラ場で暮らそう。

私は陰キャだ。
友人から「クソオタメンヘラ女」という親が泣くレベルの異名をつけられたほどには湿度が高く、ネガティブで斜に構え、もはやこの世を憂うことが趣味。そういう女だ。

そんな陰キャで非リアな私が映画を好んで観る理由。それは、作品の中に自分との共通点を見つけることで、どこか満たされない自分の存在意義みたいなものを確認できるから、だと思う。
何気なく観た映画が「自分の物語」になった瞬間。世界が色づくかのようなあの瞬間。エンターテイメントの素晴らしさを素直に享受し、感動の涙を流せる、己の感性の美しさを肯定できる唯一の瞬間だと言ってもいい。

そんな自惚れのような自己肯定を受け入れてくれた、2021年上半期一番かもしれない作品。

映画大好き ポンポさん
原作:杉谷庄吾
監督・脚本:平尾隆之
キャラクターデザイン:足立慎吾
声優:清水尋也/小原好美 他
公開日:2021年6月4日 130分

<あらすじ>
映画のメッカ、ハリウ…もといニャリウッドにて、
第一線を退いた伝説のプロデューサー・ペーターゼン氏の、才能やコネクション全てを受け継いだ孫娘、ポンポさん。そのポンポさんの元でアシスタントをしているのは、鬱屈とした学生時代を過ごしたまさしく陰キャ代表、友達0人、映画鑑賞だけが唯一の趣味の、地味な青年ジーンだ。
彼はポンポさんから突然、新作映画『MARINE』の15秒予告の編集を任される。自分なんかにできっこない!と卑屈になりながらもなんとか予告編を完成させるジーン。
見事お眼鏡にかなったジーンだが、今度はポンポさんが脚本を手掛けた超大作『MEISTER』の監督に抜擢されてしまった。え⁉︎ 噓でしょどうして⁉︎
「なんでかって? 目に光がないからよ!」同じくポンポさんが抜擢したヒロインは、なんとろくに経験もない超・新人女優! これから一体私たち、どうなっちゃうの~⁉︎

という、キャラデザも色彩もストーリーもポップな映画製作映画(?)だ。
はい、観やすい!  アニメ絵苦手で敬遠するのは勿体ない~~。
映画製作をテーマにした映画は、古くは『ニュー・シネマ・パラダイス』、近年では『カメラを止めるな』など、大きな話題になる作品が多いように思う。
またアニメ制作現場を題材にしたテレビアニメ『SHIROBAKO』の劇場版ヒットからも伺えるように、制作側に焦点を当てた仕事人ムービーというのは、裏側を追体験できるような新鮮な魅力もあるのかしら。
そんな系譜として、新たに映画好きをワクワクさせてくれる映画が現れたのだ。しかもあっという間の90分!! はい、ここ大事です。大事な理由は観たら分かります。

途中都合の良い展開もありながらも、テンポ良く、かつ右肩上がりで盛り上がり続ける怒涛の90分はストレスフリーで、誰でも楽しめる要素に満ちている。
“都合の良い“と言いながらもぶっちゃけそのシーンで一番胸を撃たれ泣いちゃった。おっちゃんはね、誰かが頑張る姿に弱いの。

天啓 幸福は創造の敵

ポンポさんは監督にジーンを抜擢した理由について、「目に光がないから!」と断言する。そしてこう言うのだ。
「青春を謳歌した満たされた人間というのは、ものの考え方が浅くなるの。幸福は創造の敵。」
「現実から逃げた人間は、心のなかに自分だけの世界を作る。社会と切り離された精神世界の広さ、深さこそがクリエイターとしての潜在能力の大きさなの」

目 か ら 鱗 !

楽しくバカ騒ぎする時間を沢山過ごしてこれた、いわゆるリア充側の人間のことを羨むことは今でもある。傷ついたり泣いたり、そんなつらい時間なんて少ない方が良いとも思っている。
けれど憧れの青春を謳歌できず、斜に構え鬱屈とした日々を過ごしたからこそ、私は膨大な時間を内省に費やせ、経験から教訓を見出し、ひいては牛歩ではあるものの人としての成長に繋がらせてこれた、のでは、ないかと、ほんのちょっと思ったりもしている(小声)(自信なし)。

自分自身のこころの欠片を追求し、自分を自分たらしめるものを理解し、アイデンティティの輪郭をはっきりさせる。それは、例えば小説を読んだり、映画の胸を打つ音楽や歌詞、セリフに出会ったりして、心が揺れ動くことで生まれる。

作品との共通点を見つけ、ときに涙を流すことで、自分の特別なものにしてきた。その結果、今こうして拙いながらレビューを書く機会を頂けている。そう考えると、不幸だと思っていたあの時代は無駄ではなく、創造の一端になっているのかもしれない。

クソオタメンヘラ女と言い放った友人へ
言い方を変えて頂きたい、爆感受性思慮深内省レディ と。

今日もまたとりとめのない感想を書いてしまった。
でもポンポさんが言っていたように、“自分の物語を、伝えたい人に向けて作る”というポリシーをもっていればきっと誰かに響くだろう。

百人中百人に響くレビューは書けなくとも、誰かの物語を、自分の物語にして救われてきた全ての人たちに 届きますように

悲しい、けど悲しいだけじゃない『この世界の片隅に』ねっちょりレビュー

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