わたしの紡ぐ言葉が綺麗だと言った
わたしの姿を綺麗だと言った
わたしの苦しみを痛みを
それすらもわたしであって尊いと言った
わたしの置いてきた言葉はすべて
いつまで経っても理想で
自分が追いつくことのできないものでもある
わたしの中から出るものだけど
わたしのものではないかのように濾過されて流れては文字の羅列となっていく
これがあなたの好きなものなら
そこにわたしはいないかもしれない
一人でいるのには慣れてた
孤独なんていつものことでどうにでもなるから耐えられた
なのに
二人でいる時の幸せを知って
暖かさを知って
安らぎを知って
一人でいることの寂しさを知って
会えないときの恋しさを知って
ずっと強く生きてきたのに
そう生きてきたはずなのに
好きになればなるほど
思えば思うほど
どんどん弱く脆く醜くなっていく自分を知って
こんなふうになりたくなかった
と
こんなふうになれたんだ
と
絶望と悦びの狭間で揺れる
わたしは身の程を知っている
それだけが自分に誇れるもの
ワガママも言わないし迷惑かけるようなことも言わない
苦しくても押し黙ることくらい容易なことだと理解している
そんなことばかりが駆け巡って
また、嫌な妄想が頭の中でじんわりと広がっていく
好きになればなるほど頭の中であなたが手の届かないところへ行ってしまう想像をしてしまう
それが心の保険になってしまっている自分に嫌気が差す
どうせあなたもいなくなってしまうんでしょうと
わたしをおいて遠くへ行くのでしょうと
「本意じゃないことを理解って」
と相手に願いと祈りを擦り付けて
わたしは許しを乞うように
ずっとずっと美しくない言葉を生み続ける
足元には自分から零れた言葉が散らかっていて
涙ながらに拭ったり
掃除することを諦めたり
これが自分の中身なんだと自覚して
知りたくなかった
自分からこんな感情が湧き出てくることを
好きなのに苦しくなることを
夢に見るほど想っていることを
今すぐにでもすべてを投げ出して抱きしめて欲しいと思ってしまう浅ましさがあることを
一緒に幸せになりたいと願ってしまうようになったことを
あなたの好きだと言ってくれた、綺麗な言葉を紡ぐことが難しくなっている自分がいることを
でも
出会ってなければ知り得なかったわたしを引き出してくれたのもあなただった
ずっとなにかを警戒して固まっていた芯を
その温かくて柔らかい心をもって
解きほぐしてくれて
その言葉をもって
わたしの紡ぐ文字たちを美しいと表現してくれて
いつでも
どんなときでも
どんなわたしでも
好きだと言ってくれるあなたの言葉の方がよっぽど綺麗で澄んでいる
それを自覚していようがしていまいがわたしは知っていたい
あなたの愛も
あなたの言葉も
あなたの腕の中の温もりも
あなたの弱さも
すべて知っているなんて
そこまで振りかぶって言うことはできないけど
それでも近くで
わたしに見せて欲しいと願っている
あなたが綺麗だと言ってくれるなら、わたしはきっと綺麗なんだと思う。
あなたがそう、言うのなら。
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