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私の青春を返して、苦いばっかりの『ママレード・ボーイ』ねっちょりレビュー#6

SERIES -ねっちょり映画レビュー

「fempass」をご覧のあなたのおこもり需要に合うことを願いつつ、おすすめ映画を独断と偏見で、ゆるっと紹介していくコーナーです。

ねっちょりじめじめしたタイプの愛の星・うお座ガール(ぺちこ)が、ねっちょりじとじと読み解いたレビューですので、何卒ご理解のほどお願い申し上げます。

文・ぺちこ/イラスト・土屋みよ

ぺちこ プロフィール

うお座の星の下に生まれた弩級のロマンチスト。“運命”とは、一本の時間軸上にあると考える淑女。つまりパラレルワールドモノは苦手。
最近、じゃんがらラーメンのヴィーガンバージョンを初めて食べたのです。植物性への先入観から、辛さもマイルドになっちゃうのかしらん、と挑戦した「ヴィーガンからぼん」が予想以上にお味そのままで感動。
からぼん、辛すぎて食べる度におなかを壊してたのが、植物性だとそれもなく。植物性すげー!!
常連っぽい外国人のお客様のTシャツには「植物性健康食」って明朝体で書いてあってアイデンティティの重要さを改めて感じるなどした。

言わずと知れた少女漫画の金字塔、原点にして頂点、生涯不動かつ、子々孫々まで語り継がれるべき漫画ナンバーワン。
愛が重すぎて少しばかり辛口になってしまったのですが、ママレード・ボーイトップオタク(自称)として吐露せずにはいられなかったの。

ママレード・ボーイ

監督:廣木隆一
原作:吉住渉『ママレード・ボーイ』(集英社)
脚本:廣木隆一、浅野妙子
主演:桜井日奈子、吉沢亮
公開日:2018年4月27日 127分

<あらすじ>
わたし、小石川光希(桜井日奈子)、高校1年生! ある日両親から笑顔で離婚宣言。ついでに松浦夫婦とパートナーをチェンジして再婚、松浦家の連れ子、松浦遊(吉沢亮)も加えて全員でひとつ屋根の下で暮らす ですって~⁉︎ た、確かに見た目はかっこいいかもしれないけど……意地悪ばっかりでこ~んなおかしな家族になじんじゃうような男、だーれが恋なんてっ!

甘くて苦いママレードは、どこ⁉︎

俺の青春を返せ。
即ちこれは悲しみにも似た怒りであり、絶望の上にある虚無である。

「遊ってママレードみたい。ほんとはすっごく苦いとこあるのに、みんなうわべの甘さに騙されて気づいてないの。ママレード・ボーイ! ね ぴったりでしょ⁉︎」

そう無邪気に笑う光希もいなければ、うわべの甘さに隠された、孤独な心を誤魔化す遊も見当たらない。なぜこうなった? 誰が誰のためにこうして、どういう目的でなんでこうなった???

あなたがたは、光希の良さを聞かれたとき、なんと答えるだろうか。
遊の言葉を借りるならば「素直で真面目でなんでも一生懸命で、思ったこと全部隠さないで表に出す」というところにあるだろう。

しかしどうだ

映画の光希は終始仏頂面で不機嫌、誰に対してもつっけんどんな物言いをする愛想も小想もない女だったのだ。え? 笑顔の似合う光希はどこ? あなたは誰? はじめまして。

豪邸に住む才色兼備なお嬢様の茗子は朝から友人に「ウェイ」なんて品のない絡み方をする軽薄な子ではないし、銀太はあんなにもかませ犬的な無能ではない。

光希のライバル亜梨実は、果たして出す意味があったのか疑問に感じるほど魅力のない、ただの意地悪な元カノになってしまったことも悲しく、三輪先輩と名乗る者がどう見てもゴッホよりラッセンが好きそうな人だったのは幻影だったのだろうか。

なんかもう甘くて苦いママレードの感じ is どこ
とっぽくて意地悪ででも優しくて私にだけ無邪気にほほ笑む遊 is どこ

吉沢亮はかっこいい。めちゃクール。かっこいいけどあなたは誰
めっちゃクールのくせに保健室のシーンでキッスしたあと微笑むやん え〜〜!! 違うそこ解釈違〜〜!!! 遊あそこ笑わ〜〜ん ウワアーーーーーーーーーー!! 衝動的にキスした自分に驚いて光希に対する好意を自覚しつつも隠そうとする絶妙に切ないシーン〜〜!! いやーーーー!!!!

漫画の大事なところを無理につめこみすぎた結果、キャラクターたちの心情が一切描き切れていないため、原作を読んでいないザワリョファンの方々はちんぷんかんぷんだったのではないかしら。

また、全体的に盛り上がりがなく暗い雰囲気だったのも、原作から遠く離れてしまったように思う。
この暗さ、光希が終始ぶすっとしていること以上の最大の要因として、コミカルで陽気でぶっとんでるのが売りだった“両親S(りょうしんズ)”から、コミカルで陽気でぶっとんでるところを引いてしまったところにあると思う。
なんで引いちゃった? しかもキャストがまた謎に豪華。こ、ここでミポリン? もうちょっとツイちゃって良かった。もうちょっとノッっちゃって良かった。(令和に伝わるのか?)

漫画で見開き1ページ使うような超!重要な見せ場を何故か引きで(しかもドローン的な浮遊感)で撮っちゃうようなカメラワークと情景描写があまりに杜撰、いつ互いが惹かれあったのか、家族が打ち解けたのか、光希の魅力とは? 遊の魅力とは? 心の機微が微塵も伝わってこない淡々とした脚本と、誰に寄り添うこともない俯瞰的で杜撰なカメラワークに私は愕然とした。

ママレード・ボーイがママレード・ボーイではないこの世とは
これが絶望か。神は消えたのか。監督がママレード・ボーイを通して何をしたかったのかが何も見えてこない。突然のカーペンターズ。なぜ。いや、なぜ。

海辺の告白、クローゼットの中のいちゃこき、旅行最終日のホテル。

ママレードボーイを、いや平成を彩った全ての象徴的なシーンたち全ての見せ場を殺した罪深さよ。
私が一番落胆したのはホテルのシーンだ。あそこだけはせめて理性を金繰り捨てた遊の姿を見せるべきだったのではないだろうか。

このような鴻毛よりも軽い映画にでも、レビューサイトを覗くと「甘くて切なくて、キュンキュンしました(#^.^#)」などと星4つつけている若者もいるから映画とは不思議なものである。
そう、不思議なものなのだ。何故ならこんだけ言っといてラスト30分の俺

号泣

泣いたーーーーー!!! 遊――――――――!!! 遊が泣いたら私だってつらい!!!! 好きだ!!!!!!! 守らせてくれ!!!!!!

そう、どんな映画にだってどこかにプラスな面はあるはずなのだ。自分にハマらなかっただけ。そうね、この実写版の良かったところといえばこれを機に絶対にもう一度原作を読むべきという流れを作り、この時代に再びママレード・ボーイという名前を思い出させたという点につきます。

ママレード・ボーイが全ての人の前に平等であることを望む───・・

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