リアルな演技とトーンで心地よく没入できる冒頭
東京タワーを中心にした東京のまばゆい夜景で幕を開ける本ドラマ。きらめく都心で繰り広げられる若者たちの華やかな恋愛群像が展開されることを予測させるオープニングですが、ほんの数秒で期待が裏切られます。
傘をさして歩く主人公ありさの後ろ姿とともに始まる彼女のモノローグ。学校の成績もピアノコンクールも、大学のミスコンも…すべてが2位。
「私だって 誰かの1位になりたかった」
と淡々と語るありさ。
湿っぽいのにどこか冷めた口調が、彼女の歪んだ心情をうまく表現しています。抑揚をおさえた三上さんのナレーションが見事。ここで一気にドラマに引き込まれます。
ワンナイトラブから略奪への布石
主人公のありさ、その浮気相手のまさひろ、まさひろの彼女のゆうりが主な登場人物です。主人公ありさは、知人から紹介されたまさひろと、出会ったその日にホテルへ。
まさひろの彼女と自分に共通の友人がいることを知りながら、ありさはまさひろと関係を結んでしまいます。
この時点でありさは完全に、悪玉。擁護できるポイントはありません。さらにその後も、彼女はまさひろを完落ちさせるために策略を巡らします。
策略といっても複雑なものではなく、男心を刺激するシンプルな罠ですが、まさひろはまんまとトラップにはまり、二人の仲はどんどん深まります。
冷静沈着で何事にも動じない役どころということもあり、三上さんの演技はほぼ一貫してポーカーフェイス。それでいて、ちょっとした表情の変化のなかにうまく機微を感じさせる演技力の高さには舌を巻きます。
“1位になりたい”ありさのさらなる陰謀
ありさは、まさひろとゆうりを別れさせるために、共通の友人を呼び出し恋愛相談。もちろんはじめから相談するつもりはなく、口が軽い友人を利用して、ゆうりにまさひろの浮気を知らせるのが狙い。
ここまでのモノローグでは、ありさの口調、態度に感情の発露は見られません。あたかも、落ちゲーで大連鎖を作るために、丁寧にブロックを積み上げているかのような落ち着き払った態度が印象的です。
状況だけ書き連ねれば、悪女、泥棒猫、ビッチ…。ところが、それでもありさのことを憎みきれないのが本作の不思議なところ。宝石のような輝きも強さもないけれど、懸命に光を放とうとして転がるビー玉を眺めているような気持ちにさせられます。
アクセントの使い方や音の伸ばし方など、うまくしたたかさを表現しながらも、ふとした息遣いのなかに、女性らしいか弱さをうまく匂わせている三上さん。役に入りきった繊細な芝居が光ります。
控えめな情事の描写からにじみでるエロさ
本作での情事の場面はAVのような濃厚なものではありません。ありさとまさひろの絡みは、まさにリアルな二十代の男女のセックス。三上さんのファンは、新鮮で現実味のあるエロさを感じられるのでは?いつもは露出している部分が隠されることで、よりいっそう想像力がかき立てられるのです。
事のさなか、動画を観る人に向けてありさが語りかける演出も秀逸。三上さんと目線が合う瞬間、そのあまりの艶かしさに女性の私でもドキッとさせられました。
ありさの内面を見事に描き出してみせた圧巻のラストシーン
ラストシーンは、ありさのモノローグでしめくくられます。映えかわいいベッドの上で、淡々とその後の物語を呟くありさ。
歪んだ美女ありさの物語は、キレイにはじまりキレイに終わるのかと思わせたそのとき、カメラがひいて、彼女の部屋の全容がはじめて画面に映し出されます。
整って見えたのはベッドとその周辺だけ。秩序を欠いた生活をおくっていることを想像させるのに十分なくらい、室内が乱雑に散らかっています。
その対比的な描写は、まさに彼女の内面の発露そのもの。鮮やかともいえるそのコントラストに、多くの視聴者が息をのむと同時に、不思議とありさに共感や親しみの感情を覚えるはず。彼女の行動には何ひとつ共感できないというのに…。
共感性が高い登場人物たち。観た後にサッパリする理由とは?
本作の登場人物は、ほぼ全員最低。主人公のありさに至っては、もし身近にいようものなら“台風の目”女子。人間関係をぐちゃぐちゃにかき回す地雷ガールです。それでも、動画を観終わった後に、まるで炭酸水を飲んだ後のようなさわやかさを感じるのは、ありさ演じる三上さんの持つ透明感と、心地よいモノローグのせい。役柄の真逆ともいえる彼女のピュアな存在感が、物語に説得力を与え、生き生きとした実在として記憶に足跡を残すのです。
その他のキャラクターも同様に共感性が高く、シンパシーを覚えてしまうから不思議。観る人によって感情移入してしまう相手が違うのも面白い点で、SNSで話題になりやすいのもうなずけます。
「あざとい演技を見せられるのでは?」というちょっと意地悪な先入観を、良い意味で裏切ってくれた本作。想像していた以上の反響があったことを受け、すでにシリーズ化が決定しているとのこと。今後、セクシー女優さんたちがどんな物語をつむいでくれるのか、第二弾も楽しみですね!