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想像からはみ出たものを撮りたい。フォトグラファー・コハラタケルは「セクシー女優」ではなく「一人の女性」として写真に映す

女性のポートレートを中心に、日常を切り取ったようなどこか懐かしい写真を撮影するコハラタケルさん。2016年から始めたInstagramのフォロワー数は現在11万人(2022年1月時点)を超える注目のフォトグラファーです。

昨年8月には人気セクシー女優を被写体とした写真集『とられち』を刊行。これまで見たことないような女優たちのさまざまな“感情”を美しく切なく映した写真に心惹かれます。

そんなコハラさんが写真を始めたのは30歳を超えてから。建築業の職人、フリーライターの活動を経て、フォトグラファーに転身しました。

彼のフォトグラファーとしての原点を追うとともに、『とられち』の撮影に対する創意工夫や印象に残っているエピソードについてもお話を聞きました。

文・阿部裕華 写真・Jun Ishibashi 

ライターからフォトグラファーへ「影響力を得るためにカメラを手に取った」

――ライター時代に写真の勉強を始め、フォトグラファーに転身したと伺いました。カメラを始めたきっかけから教えてください。

コハラタケル(以下、コハラ) ライターを始めてから半年くらい経ったとき、文字を書くだけでは単価が上がらないので少しでも単価を上げるため、記事の中に写真を載せようと考えました。
同時にフリーランスで活動をしていくなら影響力も絶対に必要だと。当時(2016年頃)、Instagramが流行っていたのでやってみようかなとカメラを始めました。

――写真の勉強は独学で……?

コハラ 独学です。商業カメラマンの場合、写真スタジオを出てプロのカメラマンのもとで修行して独立するのが一般的ですが、誰からも教わることなく。

僕がカメラを始めたときは、今のようにレクチャー動画やセミナーがほとんどなくて。Instagramにアップされている写真を見て、見よう見まねで撮っていました。カメラもInstagramで憧れていた写真家の保井崇志さんが使っている機材を見よう見まねで揃えたんですよ。FUJIFILMのX-T10と35mm・56mmのレンズを買いました。

――最初はどのようなお写真を撮られていたんですか?

コハラ セルフポートレートです。現像の仕方も含め人を撮る勉強をしたいと思っていたのですが、誰に被写体を依頼すればいいのかわからなかったので、三脚を立ててセルフで。ほかには物撮りやスナップ撮影、少し経ってから赤いリボンを使ったアート寄りの写真を1年半くらい撮っていました。

――現在は日常を切り取ったような風景や自然体なポートレートを撮られている印象が強いので、少し意外です。

コハラ 今のスタイルは、数字の取れる写真を載せていこうと考えを変えてからですね。アート寄りの写真を1年半くらい掲載していてもフォロワー数は800人程度しか増えなかったんですよ。

影響力をつけるために始めたのに、このままだと自己満足だけで終わってしまう。抜本的に運用方法を変えないとと思い、戦略的にフォロワー数が伸びる策を調べ始めました

――なるほど。

コハラ 例えば、自分の投稿に対して、Aの写真はフォロワー数が伸びたけどBの写真は伸びていない、Aの写真はフォロワー数は伸びているけどいいね数は伸びていない、Bの写真はいいね数は伸びているけどフォロワー数は伸びていないとか。
今どんな写真が流行っているのか、ハッシュタグには何をつけるべきなのか、投稿する時間帯は何時がいいのか……とかいろいろ調べていきました。そこで“人気になってきていた”日常系の写真を自分も撮ろうと。

――“人気だった”のではなく、“人気になってきていた”……?

コハラ 当時はInstagramで人気だったのは、日本の名所や人気観光地のど真ん中に被写体が立った引き気味の構図かつコントラスト強めのスマホの画面で見て映える写真でした。そこに日常系の写真が少しずつ入ってきている感じ。
そんなとき、僕がたまたま見つけた写真家の内村円さんが自然体な雰囲気の写真を撮っていて、すごくいいなと。加えていいね数やフォロワー数の伸び率が明らかに高いんですよ。すでに伸びきっている人を真似するより今伸びてきている人を真似した方が数字は伸びやすいだろうと考えました。

――ちなみに、フォトグラファーとして仕事に繋がり始めたのは、フォロワー数がどれくらいになってからですか?

コハラ 約2万人くらいだったと思います。それまでは仕事の依頼なんてほぼない状態でしたね。あっても企業の新商品の宣伝のために物撮りして自分のSNSにアップするくらい。
なので最初はライター業と並行しつつ、「fotowa」という家族写真のプラットフォームに登録して、家族写真を撮影しながら生計を立てていました。

「いつかヌード写真を仕事にできたら…」フォトグラファーとしての夢を叶えた『とられち』

――電子写真集『とられち』の専属カメラマンになられた経緯についてもお聞かせください。

コハラ 2021年1月にTwitterのDMで依頼をいただきました。僕自身、写真のジャンルの中で女性のヌードが一番美しいと思っていたので、いつかヌード写真を仕事にできたらいいなと考えていて。お声がけいただいたときは、最高にうれしかったです。

――目標が叶ったんですね。

コハラ 一方で、この案件に限らず新規のご依頼が来たときは、自分の技術で対応できるのかを絶対考えるようにしていて。これまで独学だったから、いわゆる一般的な商業カメラマンと同じ技術で対応ができないんですよ。

なので最初は「もしそういった技術を望まれているようであればお断りしたいです」と送りました。だけど、担当の方が「コハラさんの写真を見てお声がけしたので大丈夫」だと言うので、ぜひ受けさせてくださいと。

――『とられち』のコンセプトである「感傷的写真集」はコハラさんが考えられたのでしょうか?

コハラ いえ、僕にDMを送ってくれた担当のこりんさんという方が『とられち』のコンセプトを考えています。コンセプトありきで僕にお声がけしてくださったみたいです。

――とてもストーリー性のある写真集ですよね。

コハラ こりんさんからは「“終わった恋”をテーマに、彼女と一緒にいた楽しい時間や悲しい時間を思い出せる写真集を作りたい。読み終わった後に感傷に浸って、もう一度読み返したくなるアルバムみたいなイメージ」「“終わった恋”をテーマにすることで、女優さんたちも感情移入しやすく、読者のみなさんもその子の恋人になった気分になれるから」と打ち合わせの際にお話しいただきました。

『とられち』の撮影では「彼氏が彼女を撮るなら」「読者さんの見たい姿」を意識

――『とられち』は自然光を生かした柔らかさのあるお写真が特徴ですが、機材など意識していることはありますか?

コハラ 僕自身、ライティングが得意ではないのもありますが、コンセプト的にも彼氏がバチバチにライティングして彼女のことを撮らないなと。

――たしかに。

コハラ だから、カメラの内蔵フラッシュのように直に光を当てることはしますが、それ以外のライティングはしていません。

――あくまでも「彼氏が彼女を撮るなら」を意識しているんですね。

コハラ それはあります。あともう一つは「読者さんが見たい女優さんの姿」も気にしています。なので、機材も少しずつ変えていて。
最初は何本もレンズを使う彼氏はいないだろうと、一本のレンズで日常っぽい雰囲気の写真を撮っていました。ただそれってこれまで女優さんを応援してきたファンのみなさんが見たい写真なのかな?と考えたときに、もう少しクリアに映した写真の方がいいかもしれないと。
いわゆる写真の技術を感じられる作品も残した方がいいのではと、途中からはレンズを変えるようになりました。

――徐々に撮り方が変化しているということですか?

コハラ 今はまだ模索中ですね。表情や動きとかも、自然体だけを意識する分には簡単で。何か頭に乗せておどけたポーズや表情をしてもらえば、いかにもな感じの写真にはなる。
でも逆に、すごくヤラセている感も出ちゃうんですよ。それよりもカメラの前でどう動けばいいのか分からなくて緊張している感じもかわいいと思うし……。今はどちらにも対応できるようにしておこうと思っていますけど、まだ考え中です。

――女優さんによって撮り方を変えることも?

コハラ ポートレートは人対人だからこそ、ライブっぽいところはありますね。でも淡々と撮影していることが多いかもしれません。
最初は緊張感のある中で写真を撮って、残り1時間でようやくいい写真が撮れてきたと感じることも。でもそれが逆に『とられち』のコンセプトにも当てはまっているのかなって。付き合いたての緊張が、だんだんと解けていくような時間の流れを感じられますしね。

――緊張すらも自然に感じられそう。

コハラ あと、『とられち』のコンセプトのお話をいただいた際に「セクシー女優さんにはAV以外の仕事も体験してほしい」というこりんさんの言葉がすごく頭の中に残っていて。
セクシー女優」としてではなく「一人の女の子」「一人の女性」として撮ることを心がけています。いい写真を撮るのはもちろんですが、それよりも「撮影が楽しかった」と言ってもらえることを大切にしようと思っています。

「自分の想像の範疇を超えるために」ハプニングをいかに起こせるかが一番の勝負所

――『とられち』の撮影中、印象に残っている出来事はありますか?

コハラ みんな印象に残っているから難しいですけど……先日撮影したあかりん(美谷朱里)が撮影の最後に泣いてくれたのは印象に残っています。

――ストーリー上の演出ではなく?

コハラ そうなんです。悲しい雰囲気の写真を撮りたいと設定をお話ししていたら「ちょっとやばいです」と泣き出して。ちょっと驚きました(笑)。
でも、そんなハプニングをいかに起こせるかがフォトグラファーとしては一番の勝負所だと思うんですよね。

――ハプニングを起こす、ですか?

コハラ 自分の想像の範疇を超えた写真が撮れる瞬間って、コントロールできない領域に到達しているときだと思っていて。僕ははみ出たものを撮りたい
だから、女優さんの事前情報をあまり入れないようにしています。どういう表情を見せてくれるかわからない分、毎回新鮮な気持ちになりながらどこまで攻めていいかを考えています
例えば、(小島)みなみさんはすごく明るい印象の方でしたけど、暗い表情の写真を何枚か撮影したんです。事務所さんからOK出るかな……と思いつつ、すごくいい表情をしてくれて。(慎)いずなちゃんがふすまに顔を挟んでいる写真も同じく。どうしても光の加減が微妙だと思われがちな構図なんですけど、中途半端だからこその良さみたいなものを感じました。

「撮影が終わったあとは反省しかない」だからこそ技術的なスキルアップを目指して

――今後もまだまだ『とられち』は続いていきますが、現段階でコハラさんが目指していることはありますか?

コハラ 技術的なスキルアップをしたいと思っています。晴れのロケーションで撮りたかったのに、曇りになってしまったとか、どんなとき・どんなシーンでも対応できるようにしておきたいです。合格点は出せているけど、もっとやれることがあったんじゃないか……と常に思っているので。

――それは『とられち』に限らず?

コハラ すべてですね。撮影が終わったあとは反省しかない

――素人目で見ると「こんなに素敵な写真ばかりなのに……」と思うのですが……。

コハラ 撮影した写真を選定していて、これは二度と撮れない!と思う写真を見つけたときは喜びを感じることもあります。『とられち』だと(天音)まひなちゃんの海の近くを散歩している写真とか。すごく一対一で撮っているような雰囲気で撮れたなって。顔に髪がかかっているのも自然体で、彼女の写真をアルバムにするなら絶対この写真を選ぶはず。
作品撮りだと1対1で撮影することも多く、最終的な責任も僕がすべて負うことになるので、とにかく自由に撮ることができます。だけど、仕事の撮影となるとスタッフの方たちもいるので、どうしても難しく感じるときもあります。まひなちゃんの散歩中の写真は普段の自分の作品撮りに近い感じで撮ることができました。

写真を通して「当たり前の日常の大切さ」を伝えていく

――フォトグラファーとしての今後の目標もぜひ教えてください。

コハラ 原点に戻ろうと思っています。その上で、以前からInstagramでやっている「#なんでもないただの道が好き」を今年はきちんと広めていきたいなと。

――なぜ、このハッシュタグを広めていこうと?

コハラ 写真を見て自分にとっての当たり前が実はかけがえのないものでもあると気づく。そして「日常を大切にする」ことへ紐づいてほしいという気持ちでハッシュタグを始めました。
ライターになる前は建築の職人をしていて、東日本大震災があった際に現地で仕事をしたんですよ。そのときの生活での一番の学びが「日常を大切にする」ということでした。

――日常が急に奪われてしまうこともありますからね……。

コハラ 震災もそうですけど、そういうことってどこにでも転がっていると思っていて。
例えば、僕が普段通る道にアジサイが咲いていたとする。けれどある日、何かのきっかけでなくなってしまった。そこで当たり前のように見ていた景色が実は自分にとって大切なものだと気づくわけです。もし毎年梅雨にアジサイを撮っていれば、写真を見返して「当たり前の日常の大切さ」を思い返すことができるんですよ。
その気持ちを持って僕は写真を撮り続けていきたい。そのためにも今は原点に立ち返っていきたいですね。

――いろんな経験を積んだ上で原点に立ち返ると、今までとはまた違う作品になりそうだなと。

コハラ いや……むしろいかにカメラを始めたてのときと同じにしていくかが重要で。最初の頃に写真を撮っていた素直な気持ちを取り戻す作業になるかなと。
はたから見たら「成長していない」「変わっていない」って思われるかもしれない。でもポイントはそこにあるんじゃないかって。技術的にどんどん上手くなっていること以上に、変わらず同じ熱量を持ち続けていることの方が大切だと思っています。

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